2016年2月、正午。
1人の男が腹をすかせ、真剣に冷蔵庫を物色していた。
昨日は一週間で最も幸福な日「土曜日」であり、つい夜更かしをしてしまった。そのため今日は起床が遅く朝から何も食べていない。
冷蔵庫の物色を終えた男は扉をそっと閉め、静かに呟いた。
「主食になる物がねぇ・・・・」
ご飯は当然無い。あろうことか冷凍食品も無い。火を通して調理すれば食べれる物はあったが、男は極度の面倒くさがり屋のため、料理をしようとは思わない。
途方に暮れた時、ある物が株主優待で届いていた事を思い出した。
緑の救世主 ミドリムシとの出会い
男の趣味は株式投資で、他にお金のかかる趣味が無いため給料の半分以上は投資に回っていた。そして男は極度の面倒くさがり屋のため、投資先の企業を真剣に選んで購入した後は完全放置というスタイルをとっていた。
「そういえば株式会社ユーグレナから株主優待のミドリムシが来ていたな」
部屋に戻り、デスクの上を探すと緑の可愛らしい箱に入ったそれは、開封されるのをじっと待っていたようだった。
「忘れていてすまなかった」
男はそう呟くと、赤子を抱くようにそれを優しく抱きかかえた。
男がこのミドリムシを扱っているユーグレナ社に興味を持ち、投資したのはもう1年以上も前になる。最初は「ムシ!?」と聞いて顔をしかめたが、よくよくミドリムシを調べてみるとそれは、
- 動物と植物の性質を両方備え、太陽光と水、二酸化炭素があれば育つ
- ビタミンやミネラル、アミノ酸などを含む59種類の栄養素を持ち、更にはパラミロンと呼ばれる希少な特殊成分を持っている
- ミドリムシを搾ればバイオ燃料となる
という、食料にも燃料にもなり、大量培養が可能な生物という事を知った。
「これは将来きっと人類を救う。欲しい、ユーグレナ社に投資したい」
日に日に思いは強くなっていった。
会社の給料日が来て、同僚達が支給されたお給料でカラオケやパチンコにウキウキと出かけて行くのを男は静かに見送った。
男にはにはすべき事があった。
彼はすぐに銀行に向かい、給料から生活費を除いた残り全てを証券口座に入れた。
家に戻りパソコンをつけ証券会社のHPにログインすると、翌日のユーグレナ株を「成行買い」で注文した。
値段なんてどうでも良かった。ただ、欲しかった。
ミドリムシを食す
さて、部屋からミドリムシを持ってきたは良いが、これ単品で食べるわけにもいかない。奴は粉末状なのだ。
どうしたものか。
お茶や牛乳に溶いて飲むのも良いが、なんというか腹が満たされない。男は固形物を食べたかった。
男はもう一度冷蔵庫を開け、何か無いかと調べる。
「あっ・・・」
てっきり枝豆の袋かと思って先程は見逃してしまったが、抹茶プリンが入っていた。
プリンのパッケージ右下に写っている抹茶粉末のイメージを見てもらえれば分かるが、粉末のミドリムシもこんな感じなのだ。
ほら。
抹茶プリンにミドリムシを混ぜるということは「緑+緑」で昼食のビジュアル的にどうかとも思ったが、背に腹はかえられぬ。空腹を満たし、且つ栄養がとれるなら良いか。
さっそく抹茶プリンにミドリムシをふりかける。
角度を変えてもう一枚
切り立つ断崖絶壁に降り積もった緑の雪。
まるで登山者を拒む冬山のようだ。もし足を滑らせて滑落したら・・・と考えると背筋がゾクッっとした。
もし私がドラゴンボールのナメック星人だったら、この山のようなプリンを見て故郷のナメック星を懐かしむに違いない。
「タッカラプト ポッポルンガ プピリット パロ!!」
緑の雪で覆われたプリンを見ながらポルンガを呼んでみたが何も起こらなかった。
私の願いは叶わない。
(※ポルンガ: ナメック星の願いを3つ叶える事の出来る龍)
味の方は抹茶プリンの味が強く、ミドリムシの繊細な味は私には分からなかった。
粉っぽくて何度かむせてしまった。やはりお茶や牛乳に溶いて飲むほうが良い。山に挑んではダメだ。
そういえば、
地球のドラゴンボールは野球ボール位の大きさだけど、ナメック星のドラゴンボールはもっと大きかった。人の頭くらいはあった気がする。
会社にいる頭の薄い方々を7人呼び集めれば、もしかしたらポルンガも出てくるかもしれないという嫌な妄想をしながら腹を満たし、ブログを書き終えた。
今回はプリンの味が強すぎてミドリムシの味がわからなかったが、水やお茶、牛乳に溶かして飲むとよくわかる。飲んだ方の記事はこちら。
僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦
- 作者: 出雲充
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2012/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 44回
- この商品を含むブログ (11件) を見る